(2022/01/05:更新)
楽譜を見てリズムを正しく演奏することは得意でしょうか?
あまり得意ではない人は「まずは音源を聴いてみよう」と言ってリズムを覚えてから弾いているという人も多いかもしれません。
今回はリズムを正しく演奏するためのヒントを記事にしてみます。(ヒントと言ってもとても当たり前のことかもしれません)
リズムを正しく弾けていますか?
皆さんは楽譜に書いてあるリズムについてどのくらい正しく弾けてるでしょうか。楽譜に書かれている音符はそれだけで音程とリズムの両方を表しているため,案外複雑なものです。
この2つの要素のうちリズムは音楽をより楽しく美しくする上では不可欠ですし,自分で弾いて楽しんだり,他人に聴かせたりするための聴き心地の良い音楽を演奏する上ではとても重要になります。
太鼓の達人などのリズムゲームでは基本的にリズムのみがゲームの判定基準になりますが,今回の記事の内容を身につけるとリズムゲームも得意になると思います。
(太鼓の達人では両手でたたくことや縁をたたくこともあるので,必ずしもリズムだけではない部分もありますね)
楽譜から正確なリズムが分からないという人やリズムが苦手な人は,音源を聴くことや語呂合わせをすることでリズムを覚えるという人もいらっしゃるかもしれません。
楽譜に書いてあるリズムを正しく読むことや楽譜から見える音楽を知ることはピアノに限らず楽器を弾くうえで重要な要素となります。
複雑なリズムだけでなく,単純なリズムを演奏する時にも音の長さをどう考えているかリズムを捉える上では重要になります。
音符を細かく割って考えてみる
この記事のテーマである「音符を細かく割って考えてみる」という意味について説明すると,「楽譜に書いてある最小単位の音符で全ての音を数えてみる」ということです。
これだけではすごく説明があいまいなのでもう少し具体的に説明します。
今さら改めて音符の長さの定義を考えてみる
ピアノを習ったことがある人も習ったことがない人も音楽の授業でも習うように音符が示す長さは知っているかと思います。
全音符から八分音符までの音符の長さは以下の図のように表されます。
音の長さは小学生で習ったことがあるため知っている人も多いですが,全音符を基準にすると全音符よりも細かい音符は以下のように定義されます。
- 2分音符2個
- 4分音符4個
- 8分音符8個
- 16分音符16個
- 32分音符32個
細かい音符になるほど,1小節にたくさんの音符を書くことができます。そのため,音の数が多くて難しい曲では8分音符や16分音符などの細かい音符によって技術的に難しくなることが多いです。
その難しい曲を弾きこなすためには,均等なリズムや付点のリズムも含めてを正しく演奏する必要があります。
楽譜を読める人にとっては,当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれませんが,この基本は非常に重要です。
私は実際にはおおよそリズムがCDのように聴こえればOKとしていて,楽譜に書いてあるリズムを的確に読めていなかった時期がありました。
しかし,リズムを正確に弾くようになってから本番で緊張しても安定して演奏ができるようになりましたし,何より他人と合わせるときにより合わせやすくなりました。
1小節に入る音符の数は?【要するに音符の長さは小学生でも分かる足し算】
4分の4拍子の曲において1小節に入る音符の数は8分音符では8個,16分音符では16個と数が決まっています。付点のリズムや16分音符などの細かい音符が増えるごとに複雑になりますが,1小節の長さは全ての音符の長さを足すと小節の中の全音符と同じ長さになります。複雑なリズムであっても,小節のどのタイミングで音を鳴らせば良いかは音符を小節の中の最も細かい音符で考えてみるとはっきりします。当たり前のことではありますが,実際に細かい音符で読むことを意識している人は案外少ないのではないでしょうか。
リズムが苦手な人ほど楽譜のリズムを感覚で読んでいる傾向が多いと思います。最も細かい音符で読むと,どんなに難しいリズムでも全ての音符を足した時に全音符分の長さになるので,小学生でも分かる簡単な足し算が分かればタイミングを把握することが可能です。
簡単な例としては,4拍子の曲で「1234」と4分音符の単位で数えるよりも「1と2と3と4と」と数えた場合は楽譜を半分の音符(8分音符)の単位で数えていることになります。こうすることで,おとが数字の部分か「と」の部分かによってタイミングがより明確になります。
リズムについて的確に読めるようになると,演奏がより緻密になるだけでなく,音と音のつながりがより表現しやすくなります。ゆったりとした曲が流れるようなリズムやリズミカルな曲の踊りだすようなリズムを出すためには,楽譜の中の音符を細かく割ってリズムを考えるということが大切になると感じています。
簡単な曲でも音符を割ってみる(譜例をもとに考えてみる)
複雑なリズムを最も細かい音符で割って考えるということは上で説明した通りですが,簡単な楽譜でも音符を割って考えてみることは非常に重要です。下の譜例を参考にして音符を細かく割るということを説明します。右手は二分音符以上の音が並んでいて,左手は基本的に八分音符で構成されています。
上の楽譜を演奏するとき,左手の動きが細かいので左手に注目して右手の音の流れがなくなってしまうことはありませんか。これは,右手の全音符や二分音符を弾いた後すぐに次に音がないため,「思考停止」をしてしまうことが一つの原因と考えられます。ピアノは打鍵をしたときに一番大きな音が鳴り,その後で音が減衰していくことから,1小節目の全音符を弾いた後に2~4拍目の音の内容を考えることはあまりないかもしれません。全音符であるからと言って鳴らした後の面倒を見なくてよいわけではないと思っています。
そのため,譜例を以下のように考えてみます。
この譜例では,右手の動きがかなり忙しくなっています。全音符でも二分音符でも八分音符でも音の価値を変えるのではなく,実際に演奏するときは,八分音符で弾く必要はありませんが,心の中でその細かい音符の存在を意識した上で弾くと段々大きくする(cresc.)時や徐々に小さくする(dim.)をどのタイミングでどのくらい小さくするかを緻密に設計することも可能です。音を伸ばした部分では音を大きくすることはできませんが,次の音を弾くのに気持ちの上ではクレッシェンドをかけていくということを直接的に表現できるようになります。
緩徐楽章(テンポがゆっくりな曲)でも効果を発揮します
リズミカルな曲だけに効果があるのではないかと思う方もいるかもしれませんが,緩徐楽章でも効果を発揮します。ゆっくりな曲では次の音が来るまで待てないという人も多いのではないでしょうか。ちゃんと楽譜を細かい音符で割って1小節の長さを適切に把握していれば,気づいた時にテンポが変わっているということや誤ったリズムで弾いてしまうことを防ぐことができます。
また,テンポの揺らぎがある場合でも,テンポの揺らぎが急激に発生すると聴いている人がつかれてしまいます。徐々に速くなったり,徐々に遅くなったりするのを細かい音符の単位で「速く,ゆっくり」を調節することで,聴いている人に心地の良いテンポの変化を設定することもできます。
リズムが苦手な人は得てしてゆっくりとした曲が苦手な人が多いですが,音符をしっかり割って考えることでリズムは怖くなくなります。まずは,楽譜からリズムを読むことに自信をつけるところからスタートできると良いと思います。
まとめ
今回は音符を割って考えるということを紹介しました。小さい頃のレッスンや小学校の音楽の時間に音符の長さを習うものの実際にはレッスンでは教えてくれない話かもしれません。少なくとも普通のピアノの先生に習っていた間は教えてもらうことはありませんでした。
楽譜の読み方として基本中の基本の話なのかもしれませんが,ちゃんと身につけると強弱やテンポについてより緻密に考えられるようになるため,自分の演奏のレベルアップにつながります。
できない曲もありますが,全ての音符を実際に一番細かい音符に割って弾いてみると本来はそれくらい細かく音楽を考える必要があると気づかされます。これはかなり上級編になると思いますが,ぜひトライしてみていただければと思います。
あまり楽譜を読むのが得意でない人やリズムを正確に表現することが苦手で何となくで弾いている人はぜひ細かい音符で割って考えてみてください!
この記事が皆さんの少しでも役に立てば幸いです。