あえて弾きにくい弾き方をしてみたらどうなるか【演奏技術の最適化へ】

ピアノ

ピアノに関する本やピアノの先生から教えてもらうことには「正しい姿勢」や「理想的な弾き方」というものがあります。理想的な弾き方や弾きやすい弾き方を身につけるとき,あえて弾きにくい弾き方で弾くと色々なものが見えてきます。

例1:あえて力を入れて弾いてみるとどうなるか【脱力の理解】

理想的な弾き方の例として,まず脱力を例に取ってみます。

「力を抜いて」ということは初心者のうちにはよく言われると思いますが,すぐに力を抜いて弾けないというのは力を入れている状態を認識できていないことがひとつの原因かもしれません。

腕や手に力を入れることを意識していつも弾いている曲やハノンを弾いてみるとどうなるでしょうか。すぐにできる人は肩や手首,指に力を入れて弾いてみるとすぐに弾き疲れてしまうのではないでしょうか。

一方,どうやって力を入れればよいか分からず,すぐにできないという人もいます。これは「力のコントロール」がまだ完全にできていないといえると思います。

「そんなことのコントロールができなくても…」と思う人もいるかもしれませんが,本番での演奏でいつもの自分の演奏と違う演奏になってしまう人は本番の緊張で「自分の身体のコントロール」ができていないと考えられます。

すぐにはできない人もこの力のコントロールを身につけると,演奏している今の状態で自分の力が入っているか抜けているかという状態を認識できるようになるため,例えば,指が転んでしまうときにどういう力が入っているのが原因かということが分かります。

「脱力」はピアノを弾くうえではかなり重要な技術の一つではありますが,「力が抜けている状態」を意識して身につけるのは難しいので,逆に「力を入れている状態を」意識してみると「力が入っていない状態」が分かるようになり「力が抜けている状態」を自然に理解できるようになります。

例2:できる限り指の腹をつかって弾いてみるとどうなるか

いつも指を立てて弾いている人は指を寝かせて指の腹で弾いてみると色々な世界が見えてきます。

できるだけ指の腹で弾いてみようとすると,指の関節を根元から動かすことができます

私は安定した演奏をするためには,指の根元から動かすことが重要と考えていますが,思ったよりも小指は指先に近い関節の曲げ伸ばしで弾いているというところが見つかります。

また,指の先を使うよりも力が鍵盤に伝わりにくくなるため,柔らかい曲を弾くときには良いかもしれません。

一方,指が自然と伸びる形になるので指先で鍵盤をしっかり押さえる(つかむ)意識がなくなり,鍵盤をはっきり押せなくなることから強いタッチで演奏するのは難しくなります

「弾きやすい/弾きにくい」ということはもちろんですが,いつも弾かない弾きにくい方法の方が出しやすい音があることが分かれば,その弾き方で弾いたり,その弾き方で出る音を真似ることで音色の変化や使い分けが身につくようになります。

例3:手の甲をできるだけ低くしてみるとどうなるか

ピアノを弾くときの手の形は色々なピアノの教本でも紹介されていますが,手首の形については「自然に」と書いてあって必ずしも適切な高さが分からないということもあります。

いつも弾いている曲で手首(手の甲の高さ)を高くしたり,低くしたりしたらどうなるでしょうか。

実際にやってみると,指の動かしやすさや指がタッチできる深さが変わることが分かります。また,自分がどの手首の高さで弾いていたかあまり意識していなかったという人もいると思いますが,案外動きやすい手首の高さが見つかるかもしれません。

ピアニストのホロヴィッツは指を寝かせて低い手首の位置で弾いています。音質によっても使い分けているというピアニストもいるので,自分にはどのような弾き方が良いか模索することが大切だと思います。

上の動画の曲(火花)は以下の楽譜に収録されています。カッコいいのでとてもおすすめです。譜読みや演奏の難易度はそれほど難しくないので興味がある人は挑戦してみると良いと思います!

まとめ:いつも弾いている弾き方が最適とは限らない

何気なく毎日のようにピアノを弾いていると上手くなりたいという気持ちはあるものの,自分の弾き方を見直すということはあまりしないかもしれません。

自分で弾きやすい弾き方を見つけるためには,あえて弾きにくい弾き方をしてみるともっと技術が洗練されていくと思います。これはまるで今流行っているAIや機械学習の最適化の方法にも似ているのではないかと思います。

一般的に「理想的な基本の形」というものがありますが,個々人で手の形や指の動かし方の感覚が異なることから「自分のやり方」を見つける必要があると思います。

興味のある人は少しずつ自分の演奏技術の最適化に挑戦してみていただければと思います。

ゆきふり

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