官僚的なソナチネという曲をご存知でしょうか。私は中学生くらいの時に弾いたことがあるのですが,クレメンティのソナチネハ長調 作品36の1が聴こえてくるような作品です。曲の難易度もそれほど難しくなく,基本的な技術が詰まった曲なので紹介してみます。
官僚的なソナチネとは何か
どんな曲か?
エリックサティはフランスの作曲家です。サティはさまざまな素敵な曲を作曲しており,誰もが一度は聴いたことがある「ジムノペティ」や「ジュ・トゥ・ヴー」がとても有名です。今回紹介する官僚的ソナチネは1917年サティが51歳の時の作品です。
クレメンティのソナチネは「林先生の初耳学」で流れるソナチネですが,この官僚的ソナチネはそれを編曲された?曲です。
どんな曲かはあとで出てくる動画を見ていただければわかりますが,全ての楽章について独特な編曲がされています。サティの官僚的ソナチネの方がクレメンティのソナタより好きという方もいらっしゃるかもしれません。
また,この曲には詩がつけられています。「官僚的」とあるように,役人が役所へ出勤して退勤するまでの物語となっています。
とても風刺がきいていて共感する人もいらっしゃるかもしれません。。
演奏動画はこちら
クレメンティのソナチネ
官僚的ソナチネ
詩を訳して内容を見てみる
フランス語の詩を訳してみました。とは言っても,フランス語あまりできないのでGoogle翻訳とWeblioフランス語辞典を使ってなんとなく訳したものなので,意味は通っていないようにも感じます。あくまでこの曲でどんなことが書かれているのか参考として見ていただければと思います。
1er mouvement : Allegro 第一楽章:アレグロ
Le voilà parti. Il va gaiement à son bureau en se “gavillant”. Content, il hoche la tête. Il aime une jolie dame très élégante. Il aime aussi son porte-plume, ses manches en lustrine verte et sa calotte chinoise. Il fait de grandes enjambées ; se précipite dans l’escalier qu’il monte sur son dos. Quel coup de vent ! Assis dans son fauteuil il est heureux, et le fait voir.
彼は家を出発する。彼は喜んで職場(詰め所)へ向かっている。幸せと彼はうなずく。
彼はエレガントできれいな女性を愛しているが、同時にまた、ペンホルダー、緑の光沢のある袖カバーや中国製のキャロット(縁なし帽)も気に入っている。
彼は大股で歩き,階段を駆け上がります。なんて突風だ!彼は肘掛け椅子に座り,幸せそうである。
2ème mouvement : Andante 第二楽章:アンダンテ
Il réfléchit à son avancement. Peut-être aura-t-il de l’augmentation sans avoir besoin d’avancer. Il compte déménager au prochain terme. Il a un appartement en vue. Pourvu qu’il avance ou augmente ! Nouveau songe sur l’avancement.
彼は自分の進捗を振り返る。 おそらく彼は昇進はしなくても昇給するだろう。 次の給料日には引っ越しを考えている。もうアパートには目をつけているのだ。 昇進か昇給があればの話だけれど! 彼は昇進のことを再び考えはじめる。
3ème mouvement : Vivache 第三楽章:ヴィヴァーチェ
Il chantonne un vieil air péruvien qu’il a recueilli en Basse-Bretagne chez un sourd-muet. Un piano voisin joue du Clementi. Combien cela est triste. Il ose valser ! (Lui, pas le piano) Tout cela est bien triste. Le piano reprend son travail. Notre ami s’interroge avec bienveillance. L’air froid péruvien lui remonte à la tête. Le piano continue. Hélas ! Il faut quitter son bureau, son bon bureau. Du courage : partons dit-il.
彼は低地ブルターニュの聾唖者から集めた古いペルーの歌を口ずさむ。隣の家のピアノがクレメンティを演奏している。なんて悲しい曲なのだろう。彼は思い切ってワルツを踊っている(彼はピアノを弾くかないのだ)。何もかもが全てとても悲しい。ピアノが再び演奏を始める。友人は優しく尋ねます。ペルーの醒めた歌が再び頭をよぎります。ピアノは演奏を続けます。ああ!あなたはもう居心地の良い役所を辞めなくてはならない。勇気を持って「さあ出て行こう」と彼は言った。
楽譜はこちら
楽譜はヘンレ版から出ています。興味がある人は挑戦してみると良いと思います。
まとめ
今回はサティの官僚的ソナチネを紹介しました。
クレメンティのソナチネを弾いたことがあるという人は息抜きやネタとしてこの曲を弾いてみると練習のモチベーションを持続できるのではないかと思います。
演奏動画の楽譜を見ても分かるように,高難度で手が出せないという人は少ない曲だと思いますし,譜読みが得意な中級者以上であれば初見である程度弾けるレベルではないかと思います。
初心者の方はクレメンティのソナチネが弾けるようになった上で,余裕がある人はぜひ挑戦してみていただければと思います。