美しい曲の代表格:亜麻色の髪の乙女(ドビュッシー)
世の中には美しい曲がたくさんあります。
皆さんが美しい曲といって思い浮かべる曲にはどのような曲がありますか。
今回は私の中では美しい曲の代表格と言っても良いドビュッシーの亜麻色の髪の乙女を紹介します。
亜麻色の髪の乙女はどんな曲?
ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」は24曲ある前奏曲の中の第1巻に収められています。
フランス人のルコンド・ド・リールの詩の一節からタイトルが付けられたようです。
作曲されたのは1909年なので作曲されてからまだ100年ちょっとしか経っていない比較的新しい曲です。
前奏曲は全部で24曲あるので全ての調が割り振られているのかなとも思いますが,この前奏曲集ではそういったことはありません。
24曲の中には「アナカプリの丘」や「沈める寺」,「花火」といった,まれに発表会で演奏される曲もありますが,この「亜麻色の髪の乙女」は24曲ある前奏曲の中で一番有名なものではないかと思います。
曲の難易度については後に解説します。
ところで亜麻色って何色?
亜麻色の髪の乙女は各言語で以下のように書かれます。
フランス語(原語):La fille aux cheveux de lin
英語:A girl with flaxen hair
いずれもフランス語の”lin”,英語の”flaxen”が亜麻に対応した言葉であり,ここでは亜麻色という意味になります。
つまり,もともとの曲名に「亜麻色」という言葉が使われています。
ここで,亜麻色がどんな色なのかご存知でしょうか。
色に詳しい人は「亜麻の色」というイメージが付く人がいるかもしれません。
私は麻のデニムがあることから麻の色と言ったら「青」と思っていたのでよく分からず調べてみたところ「亜麻を紡いだ糸の色であり,黄色がかった薄茶色」という表現がされていました。
色を調べて亜麻色をRBG(R:199,G:184,B:151)で生成して作成したものがこちらです。
とても簡単な括りで言うと「ベージュ」に近い色かなと思います。しかし,厳密にはベージュやキャメルなどとの色は異なるもののようです。色を識別するためのRGBの数値も異なります。
この色からは落ち着きのあるイメージの印象を受けます。つまり,髪の毛の色は茶髪よりももっと色の優しい「亜麻色」ということが分かりました。
難易度は?どのくらいのレベルか?
曲の難易度を考えるとドビュッシーの前奏曲の中で一番弾きやすいレベルではないかと思っています。
曲の長さは見開き1ページです。(数えてみたら全部で39小節でした。)
ただ,フラットが6つついている変ト長調なので,譜読みが少し大変だなと感じる人もいらっしゃると思います。
指使いがある程度決まっていれば細かい指の動きがネックになって弾けなくなるということはありません。
この曲で難しいのはペダルの使い方とテンポの変化(揺らぎの与え方)かなと思います。
特に,テンポはこの美しい曲の落ち着きを与えるためには大切な要素となります。
ゆっくりとしたテンポの曲なので,1小節の長さが短くならないように音符長さを確実に演奏する練習が必要となります。
私は演奏するときに2分音符は大体このくらいという長さではなく,16分音符や32分音符などで割っていくつの音符が入るかということを考えながら演奏するのが良いと思っています。
テンポの揺らぎがある曲なので音の長さをきっちり守らなくても良いのではないか?という声も聞こえてきそうですが,基本のテンポの枠組みを分からずに揺らぎを与えるのと,テンポの枠組みが分かって揺らぎを与えるのでは演奏している安心感が大きくなり違和感が少なくなります。
特に,このような間が大切になる音楽では音の長さが徐々に短くなってテンポが自分の弾きやすいものになってしまうという演奏になりがちなので,全ての音符を16分音符で割って考えるような考え方や練習をしておくとより魅力的な演奏が可能になります。
音価(音の長さ)については過去に記事にしていますので,ぜひ以下の記事も参考にしていただければと思います。
演奏動画の紹介
演奏動画はこちらです。
曲を聴けばこの曲か!と分かる人も多いと思います。
私はとても心の落ち着くような美しい曲だと感じます。
亜麻色の髪の乙女にはピアノ版だけでなく,オイストラフが演奏したバイオリン版の美しい演奏もあります。
興味のある人はヴァイオリン版もぜひ聴いていただきたいと思います。
こちらも歌っているような美しい演奏なので思わず涙が出てきそうな演奏です。
楽譜はこちら
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色々な楽譜の版があるので,値段で選ぶのであれば全音楽譜出版社が最も安い価格で手に入ります。
私が個人的におすすめなのは安川加寿子さんが監修している音楽之友社の楽譜です。
運指が弾きやすいように考えられているだけでなく,楽譜もとても見やすく使いやすいように設計されています。
あまり全音出版社のものと値段は変わらないので迷った人は音楽之友社のドビュッシーの楽譜を手に入れることをおすすめします。
余談ですが
亜麻色の髪の乙女という曲はドビュッシーのの曲だけでなく,ヴィレッジ・シンガーズの曲を島谷ひとみさんがカバーして歌っていた印象があります。私は小学校くらいの時に聴いていた印象があります。(ヴィレッジ・シンガーズは今回調べてみて初めて知りました)
作曲されたのが1968年だったのでポップスとしてはとても古い曲だと初めて知りました。
クラシックでは100年前は比較的新しいというのに,ポップスでは50年前は古いというのもおもしろいなと感じています。
ちなみにヴィレッジ・シンガーズの亜麻色の髪の乙女の作曲者はドラゴンクエストシリーズの作曲家として有名なすぎやまこういちさんです。
昨年お亡くなりになりましたが,ドラゴンクエストに限らず幅広い分野の作曲をしており,それに加えて自ら指揮を振るというとても才能あふれた方です。
オリンピックや紅白歌合戦でもその活躍が取り上げられていたのは印象的です。
まとめ
今回はドビュッシーの亜麻色の髪の乙女を紹介しました。
テンポがゆっくりで指が回らないというような技術が必要になることはありません。
初心者でも比較的取り組みやすい曲ですし,とても美しい曲なので中級者以上の人はぜひレパートリーの一つに入れてほしいと思っています。
この記事が皆さんの役に立てば嬉しいです。