ゆきふりです。
ドビュッシーには子供の領分の「ゴリウォーグのケークウォーク」やベルガマスク組曲の「月の光」,亜麻色の髪の乙女など美しい曲がたくさんあります。
今回はもっと初心者向けの曲として「小さな黒人」という曲を紹介します。
どんな曲?
ドビュッシーはフランスを代表する作曲家です。
フランスの印象派の時代で絵画でも印象派というジャンルがあるので「印象派の音楽」と聞いただけでどんな曲かイメージが湧く人も多いかもしれません。
「小さな黒人」という曲はピアノを小さい頃から弾いている人は聴いたことや弾いたことがあるかもしれません。
ハ長調のリズミカルな曲で曲の冒頭から中間部に至るまで子供の領分の「ゴリウォーグのケークウォーク」を感じさせるような曲です。
ちなみに「ケークウォーク」とは,アメリカの黒人の間で誕生したダンスの一種のようです。
そのため「小さな黒人」と「ゴリウォーグのケークウォーク」は曲名からも兄弟のような曲と言えるかもしれません。
「小さな黒人」は曲の冒頭から右手は16分音符と8分音符が組み合わさったリズムで,左手は3度の音階で徐々に下降していきます。
そして冒頭のメロディを右手で弾きながら,左手が右手の上を飛ぶように演奏することによって,リズムがはっきりするようになっています。
曲の中間部は長い音符が続きますが,メロディに対して合いの手のように和音が入り,長い音符が間延びしないような作曲技法が使われているように感じます。
そして最後は,冒頭のメロディに戻り,手と左手でスキップするような上行系のリズムを弾いていき明るい和音で終止します。
言葉だけではわかりづらいと思いますが,曲全体として自然と推進力が感じられるような音楽になっています。
難易度は?
難易度はそれほど難しくなく,曲も長くないので子どもや大人の初心者に非常におすすめです。
特に1曲仕上げるのに時間がかかってしまうという人でも比較的簡単に弾けるようになると思います。
曲の中で難しいかなと感じる技術は以下の通りです。
・8分音符と16分音符のリズムをはっきりさせること
・左手が右手の上を超えて演奏すること
・中間部の合いの手の和音の弾き方
しかし,これらは少しずつ練習すれば誰でも弾けるようになるレベルと思います。
特に16分音符と8分音符のリズムをはっきりさせた上で前に突っ込まないような演奏ができるようになると,色々な曲に応用が利くようになりますので大切な技術だと思います。
演奏動画と楽譜
演奏動画
演奏動画はこちらです。
Youtubeでは小学生くらいでもすごく上手に弾いている人もたくさんいらっしゃいます。
大人が簡単な曲を弾くということを恥ずかしいと感じる人もいるかもしれませんが,簡単な曲を美しく弾けることもとても重要な技術のひとつです。
小さな黒人の演奏の中で私が気に入っている演奏の一つである金子一朗さんの演奏の動画を紹介します。
音が綺麗でお手本にしたい演奏だと思います。
楽譜はこちら
楽譜はヘンレ版や音楽之友社から出版されています。
ヘンレ版は1曲しか収録されていませんが,楽譜のデザインがカッコよくて好きです。
ドビュッシーの楽譜といえば安川加寿子先生が校註されている楽譜(音楽之友社から出版されているもの)が一番おすすめです。
(こうちゅう:いわゆる楽譜に注釈などを加えることなので,監修のイメージが近いかと思います)
小さな黒人が収録されているのは第8巻(小品集)です。
安川先生が校註されたドビュッシーのピアノ曲集は,上記の小品集以外にも以下が出版されています。
・第1巻:子供の領分,アラベスク第1番・第2番
・第2巻:版画,ベルガマスク組曲
・第3巻:映像第1集・映像第2集
・第4巻:ピアノのために,喜びの島
・第5巻:前奏曲第1集
・第6巻:前奏曲第2集
・第7巻:練習曲集
・第8巻:小品集
・第9巻:連弾曲集
知っている人はこの楽譜が使いやすい(練習しやすい)ということがよく分かっていると思いますが,楽譜の強弱の付け方だけでなく,ペダルの踏み方やドビュッシーの楽譜によくある音を数小節にわたって音をのばす場合の弾き方,手を交差したり左手の音を右手で弾くような指示をしたりなど,注釈を守って弾くだけでかなり弾きやすくなるようにできていると感じています。
今のところ,ドビュッシーの楽譜ではこの楽譜のシリーズが一番良いと思っていますが,「もっといい楽譜がありますよ」という人がいらっしゃれば教えていただければ嬉しいです。
ちなみにごくごく最近まで知らなかったのですが,楽譜を1曲から購入したいという人はヤマハの「ぷりんと楽譜」というサイトもあるようです。
私は使ったことがないのですが,初心者で1曲だけ練習したいという人や1冊の本を買うのには抵抗がある人はこちらから購入しても良いのかもしれません。
まとめ
今回はドビュッシーの小さな黒人を紹介しました。
私もドビュッシーの曲はとても好きですが,とっつきにくい印象がありました。
小さな黒人のようなリズミカルでワクワクするような曲はドビュッシーの入り口としてとても良いと思います。
印象派という言葉に引っ張られずに「小さな黒人」やその次に「ゴリウォーグのケークウォーク」を弾いていくとドビュッシーも少しずつ好きになるかもしれません。
この記事が皆さんに少しでも役に立てば嬉しいです。
ゆきふり