ピアノを弾くとき鍵盤を押すことに意識がいきますが,ピアノは鍵盤を離すと音が止まることから鍵盤から指を離すという動作も非常に大切です。今回は鍵盤から指を離す動作について考えてみようと思います。
手を握る動きと開く動き
人間の手の動作には手を握る動きと手を開く動きがあります。ピアノを弾くうえではオクターブを弾くときには手をパーにして親指くぐりをするときは手を縮めてというような細かい手の伸縮があります。
ここで,手をグーにする動きとパーにする動きを考えてみます。どちらの動きが速く瞬間的にできるかというと,多くの人が手をグーにする動きではないでしょうか。
また,ブログの最初の写真にもあるようなトレーニング器具は指を押す方向の力を鍛えるもので指を離す動作を鍛えるものではないと思います。
鍵盤を打鍵する時の動作を考えてみると,鍵盤を押すときはどちらかといえば手を握る方向に指を動かしますが,鍵盤から手を離すときには逆の方向に指を動かす人もいらっしゃるのではないでしょうか。
力を抜いて手を持ち上げると自然には指は手の閉じる方向に
手を鍵盤に置いて手の力を抜いて腕ごと鍵盤から持ち上げるように上に動かすと指は手の内側の方向に動き,自然と指は手は閉じる方向(グーの手になるよう)に動きます。手の構造からしても,鍵盤を下まで押している状態から指を離すとき,指を上に持ち上げるためにはかなり力を使うこととなり,速い打鍵をする場合は,指を打鍵する速度だけでなく,指を鍵盤から離す速度を高める必要があります。
ここで上手いピアニストの演奏を見て見ると指を鍵盤から持ち上げる動作をしている人はほとんどいないのではないでしょうか。ピアノを始めて少し時間が経ってくると,鍵盤の上で指がバタバタしなくなると思いますが,これは鍵盤から指を離すときに自然と指を上に持ち上げる動作が小さくなっていることが原因と考えられます。
同音連打で指を離すことを意識してみる
ここで,鍵盤から指を離す動作を考えるにあたって同音連打の技術について考えてみます。同音連打を高速で行うためには,鍵盤からいかに手を素早く話すかということが重要になりますが,中指(3)→人差し指(2)→親指(1)で同音連打をしてみると,自然と鍵盤を速く連続で打鍵するための動作に気づくかと思います。もし,同音連打が得意ではないという人はYoutubeなどで同音連打をされている動画を見ると良いかもしれません。
安定した同音連打をするためには使う指が変わっても同じ位置で打鍵をするのが一つのポイントになりますが,この時,多くの人は指を手を握る方向に動かす動作を行っているのではないでしょうか。自分が出せる最高速度での同音連打をしてみようと思ったときは,自然と鍵盤から手を離す時に自分の手を握る方向に音をつかみ取るような動きが入っていると思います。
右手と左手で見比べてみる
右手は左手よりも速く動かせるという人は右手を左手を見比べてみましょう。両手を見比べてみると,私の場合は,右手では手を握る方向への打鍵が自然とできているものの,左手は多くの場面で指を持ち上げる動きをしているところがあり,右手と根本的に異なる動きをしているということに気づきました。
自分がよりできる方の手を師匠としてもう片方の手と何が違うのかチェックしてみると,色々なことが見えると思いますので,他の技術をチェックするときも確認してみると良いと思います。
指を離す動作を効率化する
前置きが長くなりましたが,指を離す動作を効率化するためには「手を握る方向に鍵盤から離す」ということが重要となります。これは鍵盤をひっかくように弾くというわけではなく,鍵盤から離すときに握る方向に最初は意識的に,徐々に無意識的に動くようにするということです。
最終的には,指を離す動作がしっかりできるようになるとみずみずしい打鍵が可能になると考えられます。また,これができるだけで,弾いた瞬間に曲が明るくなるということも十分考えられます。特に,左手で羽の生えた軽い和音を弾くときや鋭く音を切りたいという時は「鍵盤から指を離す」という技術を効果的に使用することが大切となります。
曲の雰囲気を作る伴奏のために
片手ずつの練習をするとき,特に左手でこうした鍵盤から指を離すことを意識した練習を入念にやってみると,両手で弾いたときの曲の全体の雰囲気が大きく変わります。左手の伴奏が重くなってしまうといくら右手が軽くても曲全体に影響が出てしまいます。
曲の雰囲気や骨格を作る伴奏に当たる部分で「鍵盤から指を離す」という技術をしっかりと使えるようになると,弾いている自分もワクワクできる音楽を作ることができるようになると思います。
まとめ
今回は鍵盤から指を離す動作について記事にしてみました。実際にピアノを弾いているときに,鍵盤から指を離す動作はあまり意識されないことが多いと思います。しかし,ピアノを弾くうえでは曲の雰囲気を決める重要な役割も秘めてます。
ピアノの打鍵をコントロールするという中には音の長さをコントロールするということも含まれますので,私も色々な音色の音をだせるように「鍵盤から指を離す動作」について改めて考えてみようと思いました。
ゆきふり