【ミスタッチを減らし初見力を向上させる】触覚を使った演奏をする

ピアノ

目や耳以外の情報に頼って演奏ができないか

ピアノを弾くときは音を聴くのは耳ですが,鍵盤の位置を探すのは目となります。
皆さんはピアノを演奏するときに目や耳以外の情報にはどのくらい頼っているでしょうか。
今回はミスタッチを減らすために「触覚」の大切さを考えてみます。

触覚を頼った演奏をする

目をつぶってドの位置を当ててみる

ピアノの前の椅子に座って目をつぶり,鍵盤を手の上に置いて一発で「ド」の音を鳴らすことはできますか。
何回かトライできるのであれば,音を聴いて「ド」の音を判断することができるかもしれません。

何もヒントをなしに一発で「ド」の音を出すのは難しいと思いますが,目をつぶって当てる場合でも黒鍵を頼りにすれば「ド」の位置を当てることはできるのではないでしょうか。

つまり,ドからミの間の2つの黒鍵とファからシの間の3つの黒鍵のグループを見つけて2つの黒鍵のグループの一番左の音を鳴らせばピアノを習ったことのない人でも「ド」の音が鳴らせるかと思います。
つまり,黒鍵が全くない状態でドの位置を当てるのは基準となるものがないためとても難易度が高いですが,基準となる鍵盤があれば見えなくても音階に含まれる12音の中のうち任意の音を鳴らすことができると考えられます。

黒鍵を頼りにすると演奏が変わる

目をつぶって曲を弾くのはかなり曲芸的なものであったり,かなり練習をしないといけないものであったりと思うかもしれませんが,上で書いたように目をつぶって鍵盤の音を当てられるということは誰でも相対的な位置を把握すれば鍵盤の位置が分かるということにつながります。
こうした相対的な位置はピアノをたくさん弾いていくうちに自然と身につくという考えもあります。
そのためたくさんの練習が必要なのではないかと思う人もいらっしゃるかもしれませんが,これは意識の問題で大部分を解決することができます。
今まで考えたことがない人は弾いているときの黒鍵がどこにやってくるかその時の手や指の位置はどうか指が鍵盤にどう触れているかという触覚などを意識してみていただければと思います。

黒鍵があると鍵盤の相対的な位置が把握しやすくなるので,ハ長調の曲を弾くよりもイ長調などの黒鍵が少しある曲の方が手のポジションが決まるだけでなく弾きやすいと感じるようになります。
まずは自分が弾いているときに「目」と「耳」以外の情報を感じ取るということを意識してみていただければと思います。

キーボードでブラインドタッチができるのはなぜか

今や多くの人が仕事でパソコンを使うような時代になり,仕事内容に関係なく文字を打つのにブラインドタッチができるという人も多いと思います。
画面を見ながら文字を打てる人とキーボードを見ながら文字を打たないといけない人では生産性がかなり違います。
また,頭で思いついた内容をすぐに文字に起こせるので,書きたい内容を考えてからキーボードを見て文字の場所を探して打ち込むよりも明らかに早くタイピングができます。
この能力を応用できれば,楽譜に書いてある音をキーボードのブラインドタッチのように演奏することができるかもしれません。
しかし,ピアノではキーボードと比べてブラインドタッチができる人が少ないように感じます。
では,なぜキーボードでブラインドタッチができるのにピアノではブラインドタッチが難しいのでしょうか。

ピアノでのブラインドタッチが難しい理由は?

組み合わせやパターンがかなり多く,鍵盤の範囲が広い

パソコンのキーボードでは英数字+αのキーボードの位置を覚え,文字の組み合わせをスピーディにタイピングすれば良いことに加えて,手を開けばほとんどすべてのキーが手の届く範囲に入ると思います。

一方,ピアノの場合は通常のピアノであれば88の鍵盤があることに加えて,その位置は身体から近い場所だけでなく身体から離れた場所にもあります。
この数の多さに加えて,キーボードで日本語を入力するのであれば「a, i, u, e, o」のキーと子音に対応するキーボードの位置が分かっていれば特に問題ありませんが,ピアノの鍵盤では頻度の多い音が決まっていても「必ずこうなる」とうセオリーが調や作曲家によっても異なることや2つ以上の鍵盤を弾くという動作も含まれるため,1小節という短い時間を切り取ったとしても動作の組み合わせはキーボードに比べてはるかに多くなります。

ブラインドタッチを意識した練習が足りない

キーボードのように基本ポジションが決められていません。
つまり,キーボードとは違ってピアノではホームポジションと基本的な指の位置を知っていれば自然とブランドタッチが身につくというキーボードよりも必然的に難しくなります。
さらに,音楽を楽しむ上での大事な要素としては音を奏でることなので,楽譜を見てすぐに音にするということよりも曲がしっかり弾けるというところに重きを置かれてしまうため,ブラインドタッチのような手元を見ないで演奏するという技術はピアノの音を出すための技術と比べて相対的にウエイトが軽くなります

触覚に頼った演奏をするための第一歩として:ヒント①

ピアノでのブラインドタッチを習得するヒントとしては,黒鍵が位置の参考になります。
黒鍵の位置を手に覚え込ませるためには全ての調の音階などが弾けるようになるのが近道ですが,少し時間はかかります。
少し簡単な方法としては,リトルピシュナが挙げられるでしょうか。
この曲集は使ったことがある人なら分かると思いますが,ハノンのような機械的なトレーニングであるにもかかわらず,同じパターンの音形が徐々が徐々に半音ずつ上がっていくため,自然に様々な調の手の形の練習をすることができます
その時に自分の指と鍵盤の関係鍵盤に指がどう触れているかという感覚を意識することができるとさらに効果が高まると思います。
リトルピシュナについては以下でも記事にしていますので興味がある人はぜひみていただければと思います。

基本ポジションを決めてしまう:ヒント②

触覚を頼った演奏を身につけるためのもう一つのヒントとして,基本ポジションを1つ自分で決めてしまうという方法があります。
ピアノには基本ポジションはありませんが,ここでは強引に五線譜の真ん中の音を基本ポジションにするという方法を紹介します。
多くのピアノ曲の音は五線譜の内側の音で構成されるので,五線譜の真ん中の音を中指とした基本ポジションを1つ持っておくと初見力の向上に大きく役立つと考えられます。
ただし,基本ポジションはあくまで「基本」ポジションであって,実際にピアノを弾くときには基本ポジションを応用することになり,ずっと五線譜の真ん中の音を中指で弾き続けるということはできませんので,曲に応じた使い分けはもちろん必要です。
あくまで基本ポジションを決めるとしたらという一つの参考意見としていただければと思います。

ピアノのブラインドタッチの基本ポジション(五線譜の真ん中の音を中指とするもの)についてはこちらで解説している範囲が参考になります。

特に五線譜の中にある音符を読めるようになると初見力が向上するので参考にしていただければと思います。

ブラインドタッチでミスタッチを減らし初見力を向上させる

ピアノを弾く上では譜読みのスピードアップは1つの重要なスキルと思います。
視覚に頼って譜読みをした場合は音の位置を楽譜から読み取って,鍵盤を見て指の位置を確認して弾くという順番で譜読みを進めていくことになります。
触覚を駆使して譜読みができる場合は,このうち「鍵盤を見て指の位置を確認する」という部分をスキップすることができます。
もっと言うと,楽譜を見て楽譜から対応する鍵盤の位置が分かれば,すぐに正しい鍵盤を押すことができるようになるため譜読みが速くなるだけでなく,もっと慣れてくると初見である程度のレベルの曲を演奏できるようにもなります。
初見で曲が弾けるようになると,難しいと感じていた曲の難易度が少し低く感じるようになるだけでなく,他人と一緒に演奏するときにすぐにセッションができるようになります。
また,ピアノのレッスンを習っている人で新しい曲を譜読みしてきてと言われたときに,譜読みまでで終わらず曲の中身まで考えることができるようになるので非常にメリットが大きいです。

リトルピシュナでそれぞれの調での指の感覚を把握してブラインドタッチの基本ができた上で,黒鍵の位置を利用して鍵盤の位置を探る技術や自分の演奏している指をどこに動かせば良いかという感覚が自然と身についてくると劇的にミスタッチは減ります。
一朝一夕で身につくものではないと思いますが,身に着けることができると一生ものの技術の一つになるのではないかと思います。

まとめ

今回はピアノを弾くうえでの触覚について記事にしてみました。
パソコンでブラインドタッチができる人や手元を見ないで料理ができる人など視覚以外の感覚を使った日常のことはピアノに応用することができると思います。自分の日常の些細な動きも何か応用ができないか考えて見ると良いのではないでしょうか。

今回は「触覚」という言葉を使いましたが,視覚に大きく頼らない演奏を身につけることは自分のピアノのスキルを向上させるためのきっかけになると思います。
譜読みの効率化と曲を弾いて楽しめる時間を増やすために,ぜひピアノでの触覚を使ったブラインドタッチの習得への第一歩を踏み出していただければと思います。
この記事が皆さんに少しでも役に立てば嬉しいです。

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