電子ピアノという選択
アパートやマンションに住んでいて自宅にグランドピアノやアップライトピアノを置くことができないという環境の人も多いと思います。
最近の電子ピアノはとても性能が高いものもあり,実際のピアノとかなり近い印象を受けるものも多くあります。
私は電子ピアノでも練習ができますし,昔のキーボードとは違ってそれなりにタッチがしっかりしたピアノであれば電子ピアノでも最低限の練習をする上では問題ないと思っていますが,もちろん電子ピアノではできることとできないことがあります。
今回は電子ピアノでできることとできないことに焦点を当ててみます。
電子ピアノでもできること
電子ピアノでできる主なこととして以下の2つがあります。
譜読みの練習
電子ピアノであっても絶対にできることは「譜読み」と「譜読みの練習」です。
多くの電子ピアノは88鍵ありますので,余程のことが無い限りは譜読みをするときに音が出せないから練習できないということはありません。
譜読みもどこまでを譜読みというかによって変わりますが,少なくとも曲の音を一通りさらうような「譜読み」については電子ピアノでも事足りると思います。
私は小さい頃から初見演奏がとても苦手で曲を完成させるまでに時間がかかることが多かったですが,大人になって改めてピアノを弾きたくなって譜読みの練習からスタートしたときは電子ピアノを使っていました。
電子ピアノで楽譜を見てパッと弾いてみるという練習を繰り返した結果,昔は簡単な曲でも1曲弾けるようになるまで1ヶ月以上かかるという譜読みが本当に苦手だった私も簡単な曲であれば,初見でミスなく弾けるようになりました。(それでもまだまだなレベルですが…)
譜読みについては以下の記事も参考にしていただければと思います。
曲の練習
先ほどの「譜読み」の延長線ではありますが,曲でつっかえないように練習したりミスタッチを減らしたりという練習は電子ピアノでも十分できます。
指使いを決めるといった細かい部分からテンポの設定のような曲の大枠の部分までの練習については電子ピアノであっても困ることは全くありません。
また,曲を弾くときに電子ピアノは音を変えることができるので,ピアノの音色以外で弾いてみると曲の雰囲気が変わります。
ピアノで弾いたときのイメージと他の楽器で演奏してみたときのイメージを比べてみると,案外自分のできていない部分に気づけたり新しい弾き方が見つかったりするのでそういった使い方も可能なのは電子ピアノの魅力かもしれません。
電子ピアノではできないこと
私が思う電子ピアノでできないことは以下の2つです。
指の力を鍛える
電子ピアノは実際のピアノよりもタッチが軽いものが多いと思います。
本番やレッスンで弾くピアノにもタッチが軽いものや重いものも様々あるので一概に言えませんが,ピアノのタッチが重いときはしっかりとした音が出ないということもあります。
過去に電子ピアノだけ弾いて本番に望んだことが何度かありますが,さすがにギャップがありすぎて音色のコントロールにかなり苦労した記憶があります。
テンポがゆっくりな曲であれば少しずつ修正ができますが,弾きはじめから速いテンポの曲では音の数も多いことから即座な対応を求められました。
いつもの動きでは音がちゃんと鳴らないなんていうこともありますので,電子ピアノだけで弾いているとタッチの重さに苦戦してしまう可能性があります。
音の響きや減衰を聴く
電子ピアノでも音が自然に減衰していくのは聴くことができます。
しかし,グランドピアノやアップライトピアノのように実際に弦をハンマーで打つような仕組みのものとはやや印象が異なります。
特に,弦が響いているときの弦の振動や他の音を弾いているときに鳴る弦の音など電子ピアノではあまり感じることができないものがあります。
これはペダルの感覚にも通じるところがあります。ペダルで音が濁るか濁らないかは電子ピアノよりもグランドピアノのほうがシビアです。
「音を聴く」ということだけであれば電子ピアノでヘッドフォンをして聴いても聴くことは可能ですし,案外そのほうが自分の音を客観的に聴けるという人もいらっしゃるのですが,こうした響きや減衰といった実際のピアノを部屋の中で弾くときに聴くことのできる音を体験することは電子ピアノではやや難しいと思います。
電子ピアノでできないことはどうするか
スタジオを借りる
家にピアノが置けないという人は電子ピアノの選択肢しかありませんが,もしかすると近くにピアノを借りることができるスタジオがあるかもしれません。
私は最近は本番が近くなるとピアノのスタジオを借りて2〜3時間練習することがあります。
たまに東京都内のスタジオに行くと,近くのレッスン室でレッスンをしている人や難曲をバリバリ弾いている人,美しい音を出す人などの様々な演奏がドア越しに聴けるのも刺激になります。
子供が小さいうちはスタジオにピアノを借りるということはやや抵抗があるかもしれませんが,それだけ貴重な体験であるということをお子さんに伝えることができれば,スタジオでの練習を特別なものと思って練習への取り組み方が変わるかもしれません。
思い切ってピアノを弾ける環境に引っ越す
ピアノが好きでどうしてもピアノを弾きたいという場合は思い切ってピアノが弾ける環境に引っ越すという選択肢もあります。
かなり極端な意見ですし,毎日弾けるという環境が当たり前になるとありがたみを感じないという意見もありますが,自分が好きなときに好きなだけピアノを弾けるというとても贅沢な環境を自分の目の前に置いておくことは選択肢を増やすという考えと照らし合わせると,私はとても良い選択のひとつと思います。
ピアノは一生の趣味のひとつになり得るものだと思いますし,常にピアノが弾ける環境であれば友人を呼んでピアノを弾いて遊ぶこともできるのでこうした選択肢も人生が豊かになるのではないかと思います。
まとめ
今回は電子ピアノでできることとできないことを記事にしてみました。
私は電子ピアノでの練習も楽しいですし不満があるというわけではありませんが,やはり,本物のピアノを弾かないとできないことも多くあります。
常にグランドピアノが弾けるという環境ではないので,スタジオを借りたり実家に帰ったりしてピアノが弾ける環境にありつけるととても嬉しいですし,その機会が貴重でありがたいものだと感じます。
色々な練習方法がありますが,電子ピアノしかないという状況を決して悲観的に思う必要はありません。
楽器の性能の限界を把握した上で,電子ピアノで練習した成果をグランドピアノで試してみるという方法もとても良いと思います。
ピアノを弾く多くの人に音楽をやっててよかったなと思う瞬間がやってくると良いなと思っています。
この記事が皆さんの役に立てば嬉しいです。