皆さんはピアノに限らず,楽器を練習するときにメトロノームを使った練習はどのくらいしますか。今回はメトロノームを使った練習方法を紹介します。
メトロノームはテンポを見える化したもの
メトロノームは上で紹介した画像のように多くの人には振り子式のものがなじみがあるのではないでしょうか。メトロノームは決まった周期で音が鳴り続けることからテンポを決めて練習するという時に使われます。多くの人は,ショパンやドビュッシーといった速度の変化などで間を作る音楽を弾くようなころからはあまり使わなくなってしまった人がおおいのではないでしょうか。最近は,AIの発達などによってスポーツをはじめとした身体を使う様々な競技に対して動きの見える化をしたり,数値化したりした合理的な上達方法が模索されています。メトロノームはこういったものと同様の見える化ツールとして活用することができます。最近は,携帯電話のアプリでもダウンロードできるので興味のある人はこの記事を読んで,練習の一環として取り組んでいただければと思います。
自分の感覚のあいまいさと上達の感覚【テンポの数字で目標を数値化する】
メトロノームを使って練習をしたことがある人は,同じテンポで弾き続けていると思っているのに,メトロノームを使うと弾きながら少し待ったり,急いで弾かないと間に合わなかったりという感覚を持ったことがあるのではないでしょうか。これは自分の感覚ではテンポキープができていると思っていても実際にはできておらず,感覚に乖離があるということを表しています。こうした自分の感覚によるところと実際の演奏がどうなっているかを正確に知るためにはメトロノームは一つのツールになります。メトロノームはテンポキープのために使うよという人も多いかもしれませんが,それ以上に,私はテンポを数値化するという役割で練習に使用することが非常に効果的だと思っています。例えば,昨日までは♩=100で弾けなかったけれど,今日は弾けるようになったというように使うとテンポという数値で上達を数値化することができます。音楽には様々な要素が含まれるため,テンポだけクリアできていれば良いというわけではありませんが,目に見える成果になるため,達成感は得られるとともに少しずつかもしれないけど上手くなっているという実感ができると思います。特に,ハノンやツェルニーといった練習教材が効果的ではないかと思います。ツェルニーでは楽譜に記載されているテンポがかなり速い曲もありますので,一度弾けるようになった曲をさらに練習する上で目標設定がしやすく,はじめはかなりハードルが高く見えますが,クリアできたときの達成感を強く感じることができます。
具体的な使い方の例
ここでのコツは最初のテンポ設定と徐々にテンポを上げる上げ方についてです。メトロノームを使った具体的な練習方法を紹介します。といっても誰もが思いつく方法ではありますので,簡単に読み飛ばしていただいても構いません。
- 楽譜の強弱やリズムをはっきり意識できるテンポに設定して弾く
- 徐々にテンポを上げる
楽譜の強弱やリズムをはっきり意識できるテンポに設定して弾く
例えば,♩=100を最終目標として弾きたい場合,まずは,♪=100や♬=100などにします。これは,4分の4拍子の1小節を4拍(4分音符4個分)で弾くだけでなく,8拍(8分音符8個分)や16拍(16分音符16個分)に割るということです。もっと言うと,♩=100で四分音符の音を2拍ずつメトロノームで感じながら弾けば♪=200で演奏することになりますし,♪=100を2拍ずつメトロノームを感じながら弾けば16分音符の♬=200で演奏することになります。テンポの関係を少し整理すると以下の表のようになります。
音符の長さの基準 | ♩=100 | ♪=100 | ♬=100 |
♩ | 100 | 50 | 25 |
♪ | 200 | 100 | 50 |
♬ | 400 | 200 | 100 |
市販のメトロノームでは設定できないテンポもありますが,携帯のアプリでは自由にテンポ設定が可能なので,こうした練習に用いることも可能です。こうして,本来は♩=100を目標としているところを,実際の半分以下の速度で練習していくというところからスタートします。レベルによって考え方は異なりますが,完全な初心者は片手ずつゆっくり進めるという方法でも構わないと思います。そしてこの時に最も大事になるのが,楽譜の強弱やリズムをはっきり意識できるテンポで弾くということです。最終的には速く弾くことが目標ではあるかもしれませんが,はじめのゆっくりなテンポで弾くときに音のミス(ミスタッチや強弱のミス,細かいリズムの誤り)がない状態で弾けるように意識することが大切です。ゆっくりであっても演奏時にどのくらい細かい部分にまで意識ができるかは最終的な演奏のクオリティに大きく関係してきます。
徐々にテンポを上げる
ゆっくりのテンポで弾けるようになったら,徐々にテンポを上げていきます。この時に,例えばテンポを+5や+10など少しずつ上げていくと気づいたときには目標のテンポで弾けているということがあります。1日では達成できないかもしれませんが,何度も練習していくと,同じ曲を繰り返したくさん練習するということになるだけでなく,徐々にレベルが上がっていくということを数値で感じることができると思います。さらに進んだレベルが進んだ人は,テンポを速くしてもゆっくりな時と同じくらいまたはそれ以上に音楽を緻密に考えるということをやってみるともっと効果があると思います。
テンポをゆっくりして演奏するということについてはこれらの記事も参考にしていただければ嬉しいです。
【注意】あまり効果がない使い方
メトロノームを使った練習方法としてあまり効果がない使い方としては以下の2つの練習方法があります。
- テンポをキープためだけに使う
- 初めから速いテンポで練習する
テンポをキープするためだけに使用する
テンポをキープする練習に使うのは曲によって向き不向きがあり,あまりおすすめできません。メトロノームはあくまで同じテンポで刻み続けるものなので,テンポの緩急があるような曲には使用することができません。また,かっちりと決まったテンポで弾けるようにするということは目的としては非常に良いものではありますが,全ての曲で求められる技術ではないと思いますので,曲や練習内容に応じた使い分けが必要なのではないかと思います。もし,テンポキープの練習をするのであれば,私はピアノの先生や家族でも構いませんので,人に拍を取ってもらった方が音楽的に動きがあっていい練習になるのではないかと思います。
初めから速いテンポで練習する
最終的な目標を把握するために速いテンポで弾いてみるということは必要なステップと思いますが,ミスが多くてまだまだ丁寧に弾けないうちから速いテンポで練習してしまうと,ミスの癖がなかなか取れず動きが身につくまでの時間がかかってしまいます。地味な練習ではあるかもしれませんが,最初は自分が思っている以上にゆっくりなテンポから練習していくということが大切です。そして,テンポの数値が日に日に上がっていって目標に達する頃には,皆さんは自分の理想の弾き方ができているかもしれません。
まとめ
今回はメトロノームの使い方について記事にしてみました。使い方によっては上達への近道にもなると思います。子供でメトロノームを聞けないという人もいるかもしれませんが,メトロノームと一緒に弾くのは最も簡単なアンサンブルになります(融通を利かせてくれる相手ではありませんが…笑)。自分が毎日上手くなっているのか悩んでいる人はこうした練習をぜひ取り入れていただければモチベーションの維持や向上につながるのではないかと思います。
ゆきふり