数オクターブの音階やアルペジオを弾くと必ず出てくる親指くぐり。親指をどのくらい自由に使えるかによってミスタッチはかなり減らせると思います。
今回はそんな親指の技術の一つである親指くぐりについて記事にしてみます。以前,半音階や分散オクターブで親指の動きについて記事にしていますので興味のある人は見ていただければと思います。
親指くぐりの難しさ
得意な人は得意かもしれませんが,突き詰めてみるとかなり難しい技術の一つではないかと思います。ピアノを習っていた頃に音階の練習をしているうちに身につけたという人も多いのではないでしょうか。
集中的に親指くぐりを練習したいという人は「ハノンのNo.32~38」が良い練習になると思います。
弾いたことがあるという人は「半音上げて」弾いてみると途端に難しくなるかと思いますのでチャレンジしてみると良いです。(※できなくてイライラするかもしれません)
親指くぐりが苦手という人は練習している回数が少ない他にも技術的にクリアするべきポイントもあると思いますので,ハノンのような集中的にできる練習と技術的なポイントを合わせて練習できると案外早く身につくかもしれません。
ちなみに,ハノンのNo.35(小指の下を親指がくぐる練習)ができるようになると親指くぐりによる親指の移動だけでなく,手の柔軟性も身につくので最終的にはハノンのNo.35を全部の調でできるようになると良いです。
技術的な3つのポイント
曲で出てくる親指くぐりを弾きこなすために押さえておくべきポイントを3つ紹介します。
- 手首を傾けすぎない
- 親指が打鍵する場所がずれない
- 手の力を抜く
手首を傾けすぎない
手首を左右に傾けたり上下させたりすると,親指くぐりができることがありますが,曲を弾くときの手首の使い方とは違う形で親指くぐりが身についてしまう可能性があります。
そのため,練習をするときは曲で使う手首の形や使い方を意識して行うことが重要だと思います。
親指が打鍵する場所がずれない
右手や左手で「ドレミファソ」と弾いたときと親指くぐりをしたときの親指の打鍵位置(接地位置)は変わっていないか注意する必要があります。
親指を小指側に引き込む形になるとは思いますが,その時は根元の関節から動かします。親指をくぐらせることに意識がいきすぎて,親指の打鍵角度(接地位置)や形が大きく変わってしまうと曲で使える技術ではないだけでなく,音のコントロールも難しくなります。
手の力を抜く
言葉では分かっているのですが,いざやってみると難しいのがこの「手の力を抜く」ということになります。
頑張って鍵盤に届くように親指を動かすと手全体に力が入ってしまうということがあります。まずは集中的にできるような練習でどこまで力を抜いて動かすことができるか把握するとともに,親指の可動範囲も理解しておくことが有効です。
やってみると,ある一定以上動かすと神経が引っ張られるような感覚を感じる人もいるかもしれませんし,右手と左手で動かせる範囲が違うということに気づくかもしれません。
親指くぐりができるようになると
親指くぐりが難なくできるようになると,以下のようなことができるようになります。
- 音形のデコボコがなくなる
- 親指を中心としたポジション移動ができるようになる
音形のデコボコがなくなる
音階を弾くときだけでなく,メロディを弾くときのデコボコが解消されます。それもかなり解消されます。私は昔,親指をくぐらせて打鍵をするときに,親指に力が入り,親指の打鍵がコントロールできないため,その音が突出して大きくなることが多かったです。
親指の柔軟性がちゃんと身につくと力を入れる必要がなくなるだけでなく,手の形をきれいに保つことができるようになるため音形のデコボコはかなり解消されると思います。
親指を中心としたポジション移動ができるようになる
音階やアルペジオでは親指が中心となった移動が必須となりますが,親指くぐりが難なくできるようになると親指を中心としたポジション移動がスムースにできるようになります。
音階やアルペジオを練習していれば当然身につく技術ではありますが,音階が弾けるようになるよりも先に親指くぐりを身に着けておくと練習のストレスも減るだけでなく,練習効率も高くなります。
まとめ
今回は親指くぐりについて記事にしてみました。
音階を弾くよりも先に身につけると音階の練習もスムーズになります。もっと言うと,毎日数分やるだけで手の柔軟性も身につきます。
時間のない人でもハノンのNo.35をハ長調以外で弾いてみるということは非常に有効なので試してみていただければと思います。
再度の紹介となりますが,半音階や分散オクターブで親指の動きについて記事にしていますので興味のある人は見ていただければと思います。